令和3年(2021年)3月31日、厚生労働省より「令和元年度職業紹介事業報告書の集計結果」が公開されました。
報告書内データでは巷で問題視されているトラックドライバー不足問題をデータから浮き彫りにし、今後の対策方法について注目が集まっています。
1.厚生労働省が警鐘を鳴らす人手不足について
この人手不足問題をまずはデータから知って頂ければと思います。
低所得問題と長時間労働について
トラックドライバーの年間所得額は、全産業平均と比較して、
・大型トラックドライバーが約1割低く
・中小型トラックドライバーで約2割低く
また年間労働時間は、全産業平均と比較して、
・大型トラックドライバーが約1.22倍
・中小型トラックドライバーで約1.16倍
となっています。
人手不足と高齢化問題について
トラックドライバーの有効求人倍率も全職業平均より約2倍も高く、高齢化問題、そして実際の企業アンケートでも約7割の企業がドライバー不足と回答しています。
様々なデータから見ても、トラックドライバー不足は明らかで、このまま改善なく時代が進むと、私たちの生活を支える貨物の運搬に問題が発生してしまう事は明白です。
そのような状況化で、政府や(トラックドライバー)産業関係者の中で、トラックドライバーの負担軽減にもなるという事で、Roro船での貨物輸送が注目され始めています。
今回の記事ではRoro船の仕組み、メリットやデメリット、ニュースで取り上げられたRoro船についての情報をまとめたいと思います。
2.Roro船とは
Roro船(別称: Roll-on Roll-off Ship)とは、貨物を積んだトラックやシャーシ(荷台)ごろ輸送する船舶の事を言います。
国際間の船にはあまり用いられませんが、主要貿易港から各地の小さな港への就航する定期船(内航海運)に見られ、車が乗り入れるフェリーもRoro船の一種となります。
“RO-RO船はあくまでも貨物船であり、一般の旅客と乗用車の乗船を行わず、基本的にはドライバーのみ13人未満の定員である。また、貨物船であるため、フェリーに比べて保安設備などの規格が緩く、船員数もフェリーに比べて少ない。契約した業者の荷役のみを行い、船内への積載はドライバーではなく、乗組員の手で行われる。
それに対し、フェリーは一般旅客を受け入れ、契約していない業者のトラックも受け入れている。広い一般旅客区画が設けられている他、保安体制が厳しく定められています。”
トラックドライバーは自走で船に乗り込み、トラックや荷台をそのまま運搬できます。(↓Roro船画像)
コンテナ部だけ移動させる貨物船と比較すると、荷役時間を大幅に短縮することができます。(↓イラスト画像:コンテナ船)
コンテナ船:LOLO船(英: Lift On/Lift Off Ship)で、クレーン・リフトを使って貨物を積み卸しする貨物用の船舶のことをいいます。
Roro船運搬時のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
荷役時間が短い | コンテナだけを運ぶ船と比較すると積載効率が下がる |
トラック事故の低減 | ランプウェイの強度の問題で重量制限が生じる |
交通渋滞の緩和 | |
トラック運転手の長時間労働の改善 | |
定時運行による計画的な輸送 | |
一括輸送によるコストダウン | |
速力が早く、目的地までの所要時間が短い ➾生鮮食品や付加価値のある輸送に適す |
|
クレーンが無い港でも荷役が可能 ➾災害時の物資輸送も期待(岸壁さえあればOK) |
|
排出するCO2を減らせる |
↑こちらの動画内ではCO2排出量の削減量として、東京都江東区~福岡圏福岡市の場合、53%も削減できたというから驚きです。
3.Roro船が物流業界を救う?業界改革となるか
本記事内冒頭で述べたとおり、トラックドライバーの労働時間の削減をどう進めていくかが物流業界にとっての課題となっています。
2024年4月には労働基準法が改正され、ドラックドライバーの時間外労働の条件規制が導入されます。
今後の改正に対応・先駆けて課題解決に取り組み、Roro船導入実績のある企業も出てきています。
【実績1】大王海運
大王海運では2002年に初のRoro船運用を開始し、Roro船を3隻所有(日本のRoro船でも最大級のサイズ)、2021年には2台を追加しています。
運用しているRoro船は4層構造で、メインスペースでは80台分ものスペースがあります。
運航ルート:愛媛と関東・関西などの港を週6便で結んでいます。
大王海運では、輸送コストの削減に繋がったり、労働時間の短縮により、働ける人材の幅が広がったようです。
報道内では、低学年の子供が2人いる新人ドライバーが勤務している様子が放送されていました。
【事例2】大王製紙 川之江工場
大王製紙では巨大なロール紙をトラック輸送から(陸上輸送から)Roro船輸送に切り替え 輸送コストを削減しています。
【事例3】FUJITRANS
1962年に日本初のRoro船「東潮丸」を導入し、2021年9月時点でRoro船7船を保有しています。
最新船では7階層でトレーラー150台、乗用車864台が積載可能です。
【事例4】 商船三井フェリー株式会社
2021年8月7日に定期Roro船を初就航しました。
大型トラック約160台+完成車約220台を積載できる「ぶぜん」や
内航高速Roro船として「みやこ丸」
そして大型トラック140台+常用車130台を積載できる「さんふらわあ きりしま」も商船三井フェリーが運航しています。
【事例5】三菱重工長崎造船所
三菱重工長崎造船所では2012年建造中の世界最大級の貨物運搬船「RORO(ローロー)船」(全長265メートル、7万5251トン)の船内が2012年6月12日、報道陣に公開されました。
https://youtu.be/z7v10g4mxZY
【事例6】五島汽船協業組合
五島汽船協業組合が運行する、RORO船「フェリーさくらⅡ」総トン数883トン。長崎・福江間を3時間20分で結んでいます。
4.トラック輸送台数実績は右肩上がり
モーダルシフトの1つであるトラック輸送台数が上がっています。
商船三井公式チャンネルによると、国内長距離フェリーによるトラック輸送台数実績は伸び続けており、2014年116万から2018年には125万台と、
Roro船も含む、船上輸送が増えている事が伺えます。
5.注目のニュース
世界初 大型フェリーの無人長時間運航を実証実験(2022年2月7日)
商船三井では、全長190mのカーフェリーを無人運行する実証実験として
「さんふらわあ しれとこ」北海島苫小牧~茨城・大洗(750k㎡)を 18時間かけて無人運航しました。
海運業界では船員の高齢化に加え、業務がハードなため人手不足が続いているほか、海で起きた事故の8割が人為的な要因で起きていて、無人運航の活用でこうした問題の解決につなげたいようです。
22年ぶりに長距離フェリーが新航路が誕生
222.5m、乗客268人、自動車30台、トラック154台を積載できる「はまゆう」
運航会社の東京九州フェリーでは、神奈川県横須賀と北九州(福岡新門司)を時速52k㎡(21時間後到着)で結んでいます。
こちらの新航路により貨物輸送を行う事で、陸上輸送に比べCO2総排出量が1/4になるというから驚きです。
動画内では福山通運も効率的な物流構築の1つとして、ダイヤ運行の便利さやドライバー負荷の軽減(労働条件向上)として、この航路を利用している事も報道されていました。
豪華な船内(温泉、プラネタリウム、充実したレストランメニューなど、一般客も満足できる施設が船内にある事も注目できるポイントとなっています。
マリネックス(MARINEX)
フェリー5社からなるSHKライングループでは
蘇州太倉~横須賀 5日で結ぶサービスを2021年10月から開始しました。
SHKライングループの内航フェリーと外航フェリーをつなげることで、国内の陸送を抑えながら、短納期の輸送を低価格で提供しています。
航空輸送に問題があった際に、代替え案、新たなサプライチェーンとして注目のニュースとなっています。
トラックドライバー不足を背景としたRoro船導入の動き
以前よりRoro船導入実績のある企業はありましたが、トラックドライバー不足問題や2024年4月の労働基準法改正に伴い、Roro船の活用を始める企業、Roro船の船数を増やす企業の動きが増えてきています。
特にRoro船運搬にメリットが出やすい長距離運搬に関しては、導入が増えていく事が予想されます。導入事例が増えていく事によって、トラックドライバーの労働環境の改善、今後の運送問題が少しでも解決に向かっていくかどうか?
今後もRoro船から目が離せないでしょう。