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物流不動産の歴史と背景 | 貿易・国際物流

1.物流不動産とは

物流不動産(ぶつりゅうふどうさん)は、物流センターや倉庫などの物流施設の事を指します。


マンションや商業施設は床面積(平方メートル)を価値基準として算定しますが、物流施設は荷物の保管効率をはかる空間(立方メートル)を基準にし価値を置き 、物流施設の内部に必要な設備は、荷物や用途・輸送方法(トラック・船・鉄道)によって必要な設備や評価は大きく変わります。

主な開発プレイヤー

オリックス不動産、CRE、大和ハウス工業、野村不動産、三井不動産など不動産総合開発プレイヤーもいますが、日本GLプロパティーズ、プロロジス、AMB(上位3社でシェア51%)など、物流不動産業界ならではの会社が床面積シェアの上位を占めていました。(2010年データ)
床面積の業界シェアについて

物流不動産プロバイダー 床面積シェア
GLプロパティーズ 26%
プロロジス 15%
AMB 10%
ラサールインベストメントマネージメント 10%
オリックス 7%
日本ロジスティクスファンド投資法人 7%
日本レップ(現グッドマンジャパン) 7%
野村不動産 6%
大和ハウス工業 3%
メープルツリー 3%
産業ファンド投資法人 2%
三菱商事 2%
CRE 2%
三井物産 1%

大手デベロッパーの三井不動産のシェア1%、ハウスメーカーの大和ハウス工業のシェアは2%程度だったのは意外な印象かもしれません。(参照元

2.物流(不動産)の歴史・年表

1950年まで

利根川などの水運が発達し、江戸まで様々な物資が運ばれていました。当時の陸路は舗装もされておらず、小型の荷車を引いての短距離移動程度でした。

1950~1970年まで

都心部以外では道路が未舗装で、悪路による商品の破損を防ぐ為に、梱包がコスト高になっていました。


政府はアメリカ視察によって、流通のインフラ整備の重要さ、荷役の機械化や合理化が必要、そして物流センター・倉庫などのターミナル機能の拡充が必要と感じ、この年代で物流が大きく変わっていく時代となりました。

物流の語源: アメリカで使われていた「Physical Distribution」➾「物的流通」➾「物流」呼ばれるようになった。
1950年~1970年頃の物流の在り方
この年代の初期ではまだ所有者=運用者が同一である事がほとんどでした。
倉庫事業者:所有➾作業も自社で
荷主企業:所有➾作業も自社で
1970年~1980年頃の物流の在り方
所有≠運用へと変わっていきます。
荷主企業:所有➾作業は物流事業者に委託するように変わっていきます(複数のテナントが1施設に同居する形態はまだ)。

1970年代~

東京流通センターが大田区平和島に、寶組が品川区勝島に、それぞれ大型物流施設の開発し話題に、、、大型施設の開発の始まりこそが物流不動産のジャンルが始まる最初にきっかけだったかもしれません


この時代はまだ倉庫事業者も荷主企業も、商品を所有し、作業も自社で行っていので、この開発は時代の先取りしていました。
個人商店が多く、営業所で在庫を抱え、社員が配送も行っていた時代です。

1980年代~

スーパーマーケットの拡大に伴い、小売りが強くなっていき、流通構造が変化していきます。(商物分離が広がり始める)
①アイテム数や量が増加し、POSシステム等による在庫管理が進展
②業種別小売りから業態型小売りへシフトし、業態型小売りに適した物流システムが構築されていく
③営業拠点に在庫を抱えず、営業と物流拠点を分離し効率化を図る(配送センターの必要性が認知されていく)。物流拠点の統廃合も進む。

商物分離とは、金銭や所有権の流れである商流と、モノの流れである物流が別になる事。
・寶組、川崎市東扇島に大型物流施設を開発
・日立物流、システム物流事業を開始

その後、効率化を推し進める為に、物流全体を総括する広域流通センターを開発する動きも進みだします。
首都圏全体をカバーする湾岸部の大型物流センターと 内陸部の小規模配送センターで物流が構築されていきました。


小売サイドも、大手スーパーなどでは自前で物流施設を開発し、そこに卸業者を入居させるなど、物流施設の大型化が進みます。


逆行する動きもあり、90年代初頭までは、顧客に近いところで物流を展開する動きも、、、
例えば、新宿に顧客が多い飲料メーカーなら、家賃が高くても新宿周辺に50~100坪の小さな倉庫を構えていました。

1990年代~

景気の後退に比例するように、自前で専門センターを設けていた小売業なども、メーカーや卸業者、物流業者に委託するようになっていきました。


1990年前後には大手トラック運送事業者などが、従来の輸送サービスを単体ではなく、物流センターにおける輸配送・保管・流通加工等を総合的に請け負い提供。
1990年代後半~「3PL」という概念がアメリカから伝来し、規制緩和、荷主の物流ニーズの変化等により、急速に浸透していきました。


・横浜港流通センター(横浜港国際流通センター、1996年開業)、横浜大黒埠頭に約9万坪の賃貸倉庫を稼働
・かわさきファズ、川崎市東扇島に約5万坪の賃貸倉庫を稼働
・三井造船所有の大阪の賃貸物流施設が証券化

1999年

世界的な物流不動産のプロバイダーであるプロロジスが日本法人を設立

2000年

日立物流、ロジスティクスソリューション統括本部を新設、3PL事業などを強化

2000年代初頭~

外資系デべがマルチテナント型の大型物流施設開発に参入、市場が拡大

2001年

・J-REIT誕生
・プロロジス日本発プロジェクト「プロロジスパーク新木場」に着手
この年から年々、新しい施設が続々とオープンしていくが、特にプロロジスの開発が数が多く、早かった
・世界大手の不動産投資会社であるラサール(LaSalle) インベストメント マネージメント、日本法人設立
・私募不動産ファンドの運用会社である野村不動産インベストメント・マネジメント設立

2002年

不動産投資信託のリーディングカンパニーであるAMBプロパティ・コーポレーション(2011年にプロロジスと合併)が日本法人設立

2004年

プロロジスが関西初のマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク茨木」を稼働

2005年

・土地や物流センターなどの固定資産を抱える物流企業は大きなダメージを受けることが予想・注目された「減損会計」が導入

減損会計とは、価値が低下している固定資産の帳簿価額を、実態に合わせて減額する会計処理

・日本ロジスティクスファンド投資法人、物流施設に特化した国内初のJ-REIT上場
・コマーシャル・アールイー、大型物流施設開発事業へ進出
➾サブプライムローン問題など、景気の減速を受け開発物件価格が大幅下落。2010年に民事再生法の適用を申請し、公共建物株式会社が新設した子会社公共シィー・アール・イー株式会社(現・株式会社シーアールイー)に事業譲渡
・物流総合効率化法(物効法)が施行

物流総合効率化法: 物流を総合的、効率的に実施することでコストを削減し、環境負荷の低減を図る事業者に対して、認定。事業許可の一括取得や営業倉庫などの設備に対する税制の特例といった優遇措置を実施

2007年

・産業ファンド投資法人、J-REIT上場
・大和ハウスリート投資法人、投資信託委託事業者の認可取得

2007年

圏央道をはじめとした高速道路網が整備されたこと等により、物流施設の立地可能なエリアは、湾岸部等から内陸部へ拡大しました。

この頃の物流不動産の特徴
1.マルチテナント型が基本
2.施設の規模が大規模
3.所有者≠運用者
4.上層階へ車車両アクセス可能なランプウェイを装備

2013年ごろ

10万坪、20万坪といった延床面積を備える巨大倉庫を「メガ倉庫」と呼び、話題になり始めた時期で、規模の大きさをアピールするだけで差別化になるような時でした。

2015、2016年ごろ

巨大倉庫が増え、差別化は他の条件へと移行していく、、、、労働者の集めやすさ、立地やアクセスなど、施設数が増えた事で、多様なアピール・特色を持つ物流施設が増えていきました。

2018年~

近年でも話題のトラックドライバー不足が話題になりだした頃で、郊外のメガ倉庫からの集荷ができなくなる営業所も出てきたりと、デベロッパー側が 出荷のクルマを確保し、テナント誘致に動き出すような物流施設も現れ始めます。

2020年~

さらにマルチ施設化し、敷地内、コンビニ、保育園、ネイルサロンをつけるなど、物流施設だけでなく、そこに付随する施設、スタッフの為の周辺環境までを1つの物流施設網の開発として、進化していきます。

3.ビジネスモデルの今後

従来の物流事業者もテナントとして施設に入居するしたり、物流ディベロッパー側は、施設を貸すだけでなく、内部の作業・運用にも関与いくかもしれません。
もしくはディベロッパー自身が各荷主の物流運用まで行っていく事も考えられます。


倉庫内では作業が標準化されていき、極限までロボット化・自動化が進み、無人倉庫へ、そして作業の無人化へと変わっていくでしょう。
雇用の確保しやすい地価の高いエリアで、開発していく必要は無くなるかもしれません。


それはつまり従来の物流事業者と競合していく可能性があり、それは間違いなく物流事業者にとっては懸念点になるでしょう。


ITの普及により最近の物流業界はSCM化が進み、保管をメインにする保管型(DC)倉庫から、仕分け、加工などを中心に行う通過型(TC)機能を兼ね備えた物流施設が多くなっており、【目的】物流コストを下げる為、大型化する傾向があります。

課題点

大半の小規模施設は、古い保管型倉庫で、新規の荷主・テナントを見つけることが難しくなっています。


最新の動きとして、首都圏にある玉突き現象で空いてしまった古い保管型倉庫の再利活用として、倉庫の大空間を活かし他用途へ改修し付加価値を付けて他業種のテナントへ賃貸するRE・倉庫事業が活発化しています。


Eコマースに対応するため、荷量は今後の拡大し、建築の建て替えや、新築が盛んとなり、今後業界が伸びていく可能性はまだまだあり、中長期的に伸びていくでしょう。

この記事を書いた人

高田圭祐

高田圭祐

高田圭祐 - 東南アジアと日本で活動する”貿易・物流系Webライター”。イーノさんとはタイで知り合う。(株)HPS Linkのマーケティング全般をお手伝い。