近年様々な形でモーダルシフトが注目されるようになってました。
SDGSの観点や、労働力不足問題、現状・課題など、本記事ではモーダルシフトについて記載していきたいと思います。
Modal shiftの語源とは
Modal は 「様式の、様態の」 という意味を持つ形容詞になります。つまり直訳すると、Modal 様式を変化させる(Shift)となります。
日本大百科全書によると
「ある交通機関からある交通機関へ、旅客や貨物が利用する交通機関をかえること。
主として、旅客においては自家用車から公共交通機関へ、貨物においてはトラックから鉄道、海運などへ輸送の軸足を移す場合をさす。」
と書かれています。
モーダルシフトが注目される3つの背景
モーダルシフトという言葉が初めて使われたのは、1981年のことだったと言われています。
背景1 近年また注目されるようになりましたが、元々は1990年代前半に、旧運輸省が
「高速道路の交通渋滞緩和やトラックの排気ガスを抑えるために新しい物流政策として打ち出した」事が始まりとなります。
背景2 特に注目されたのが「京都会議」でした。
二酸化炭素排出量の削減について具体的な提言がなされたことにより、モーダルシフトのより一層の推進が図られました。
背景3 1997年9月に開催された「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」では、2010年までに500km以上の鉄道・船舶による雑貨輸送の比率(以降「モーダルシフト化率」)を50%まで引き上げる方針を決定しています。
近年でモーダルシフトが注目される大きな3つの理由とは
理由1 SDGSなど環境面を意識した取り組み
理由2 他の輸送法と連携し、トラックドライバーの長時間労働を抑制し、ドライバーの確保や改正案に対応すべく2024年4月には労働基準法が改正されました。
ドラックドライバーの時間外労働の条件規制が導入され、トラックドライバーの長時間労働を抑制するべく、他の輸送システムと連携が急務となっています。
理由3 「道路交通の混雑解消」 及び 「交通事故の抑制」
これら3つの背景を意識しつつ、次にモーダルシフトのメリットやデメリットについて述べていきます。
モーダルシフトのメリットとは?
1.環境に優しい(Co2排出量が削減できる)
具体的には、例えば営業用貨物車の二酸化炭素排出量と比較すると、
内航船の二酸化炭素排出量は約20%であり、
鉄道の二酸化炭素排出量は約12%となります。
国土交通省によると、2019年度の主要な貨物輸送手段別の「輸送量当たりの二酸化炭素の排出量」は、
自家用貨物車が1,166g‐CO²/t km、
営業用貨物車が225g‐CO²/t km、
船舶が41g‐CO²/t km、
鉄道が18g‐CO²/t km
と発表しています。(引用1、引用2)
2.遠方地域発送の場合、コストが低減される可能性が高い
一般的にモーダルシフト効果を出すには納品先の距離が500㎞~600㎞以上必要といわれています。
取り組み事例を検索してみたところ、
Torayさんの事例で、
茨城~愛媛工場間で鉄道輸送を含めたモーダルシルトの場合、1回あたり3万円のコストメリットがあったとの情報もありました。
実例ベースでコスト低減が明記されているのは信頼できる情報の1つとなります。
3.遠くまで一度に大量に運べる。輸送量に対して最小限の人員で輸送が可能になる。
【鉄道の場合】
https://www.jrfreight.co.jp/modalshift.html
【船の場合】
4.支援金がある場合がある。
支援金がある場合、コスト面での不安は減る為、モーダルシルトの移管には重要な要素となります。(詳細)
モーダルシルトのデメリットとは
1.輸送にかかる時間が長引く
荷の積み替えや、他の輸送ダイヤに合わせた運搬、天候に左右されたりと、どうしても輸送に時間がかかる事が多くなります。
トラック輸送の場合、発信地から目的地まで1つのオペレーションだけで運べる事は大きいでしょう。
2.トラックに比べると、運送時間や頻度に融通が利かない。
鉄道や船舶はどうしてもダイヤ運行である事が多く、トラック輸送から比べると融通が利きません。
3.近距離・中距離の場合、コストが割高となる。
近距離・中距離でも受け取り地と、届け先地が駅や港である場合はモーダルシフトのメリットが出る場合もありますが、
駅(港)まで、駅(港)からトラック運送が必要となればコストが割高になります。
4.積み替え作業が発生する
トラック運送から比べて、貨物車から船舶・鉄道(出発地)への積み替え、執着地点で再度積み替え、荷物移動のオペレーションが2つ増えてしまいます。
温度変化の心配、積み替え作業員の負担増加など、全ての搬入工程で見た場合、人的負担が軽減されていないという見方も存在します。
モーダルシフトの現状
実際のモーダルシフト化率は1998年度の42.9%をピークに徐々に低下していき、2006年度以降は数値も公表されなくなってしまいました。
2010年3月には「モーダルシフト等推進官民協議会」という、民間事業者と関係省庁が意見交換をするための議会が設置されました。
2016年2月にはモーダルシフト支援法とも呼べる「改正物流総合効率化法案(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案)」が閣議決定され、
同年5月2日より施行されています。
国土交通省は2020年度までに、34憶トンキロ分の貨物を自動車から鉄道・船舶輸送に転換することを目標としています。
これらのように様々な動きがあったのにも関わらず、
昭和60年~平成30年の貨物輸送量(トンキロベース)の推移を見ても、内航海運や、鉄道比率が増えているようなデータは見られません。
先程述べたモーダルシルトのデメリットの大きさや、人手不足を感じながらも、ワンオペでできたり、時間やロットサイズなど柔軟に対応できるトラック運送がまだまだメリットは大きいという事に他ならないかもしれません。
ただ力業でやってこれた企業もこれからどうなるかは、まだまだわかりません。
2024年4月には労働基準法が改正による強制的な転換が必要に迫られる企業や、人口減少・高齢化などトラック運送で押し通す事に限界が来てしまう可能性は捨てきれません。
環境を意識した取り組みや、政府からの補助金で、モーダルシフトされていき、物流が増えれば、さらにモーダルシフトのメリットが大きくなり、近い将来転換期が来る事も十分あるでしょう。