今日は企業の担当者に向けて、貿易業界におけるDX化やIT導入の予算についてお話をしたいと思う。
今回この話をしようと思ったのが、僕のタイの会社(フォワーダー)でDX化を進めようとしていて僕のタイ人パートナー(MD)と喧嘩していることが理由だったり、業界関係者に会社のDXの進捗具合を聞いた時に感じる強烈な違和感からくるものがキッカケだ。
あなたの会社でもやらなければいけないと思いながらも、重い腰が上がらないケースもあると思う。
DX化なんて必要ないと思っている人や、やらなければいけないが重い腰が上がらないという人たちに向けて僕なりの考えをお話ししていこう。
貿易業界のDXとは?
貿易業界のDXには海外とのコミュニケーションの効率化であったり、在庫管理・受発注管理、またプラットフォームを使ったサプライチェーンの最適化などがある。
この業界ではいまだにFAXが使われているケースも一部あり、デジタル化の浸透がかなり遅いというのが僕の個人的な印象でもある。
貿易の仕事では紙が使われることが多く、またメーカー・商社・船会社・フォワーダー・通関業者・税関・ドレー業者など、1つの取引に多くの会社が携わることになり、その情報の共有と管理に紙が使われていたりするのだ。
一気にデジタル化を進めようにも関係各社を巻き込んで行わないと意味がないので、ハードルが高いというのも事実である。
どんなツールがあるの?
それではそんな業界において、どのようにDXを進めていけば良いのか?僕の分かる範囲で利用できるツールなどを紹介していきたい。
CRM
CRM(顧客関係管理)は、企業が顧客との関係を最適化し、顧客満足度を向上させ、収益を増加させるための戦略だ。そしてCRMは、SaaSのオンラインソフトウェアを利用するのが殆どだと思う。
これにより、企業は、営業、カスタマーサービス、マーケティングのデータを統合し、分析し、それに基づいて意思決定を行うことが可能となる。
例を挙げると下記のようになる。
顧客情報の一元化と可視化:
顧客の購買履歴や連絡情報、商談の状況などを一元管理することが出来る。これにより、全社員が顧客情報を常に確認でき、それに基づいた効率的なコミュニケーションや提案を行うことが可能となる。
営業活動の効率化:
営業活動のスケジュール管理や商談管理、見込み顧客のフォローアップ等を行う機能がある。これにより、営業活動の効率化や生産性の向上を図ることが可能になる。
マーケティング活動の最適化:
顧客の購買傾向や反応を把握し、それに基づいたパーソナライズされたマーケティング活動を展開することが出来る。
戦略的な意思決定の支援:
販売データや顧客情報をリアルタイムで分析することで、データに基づいた正しい意思決定をすることが出来る。
RPA
RPA(Robotic Process Automation)は、ルーチン的な作業や単純な作業を自動化するためのテクノロジーだ。具体的には、データ入力、フォームの提出、電子メールの送受信などが可能となる。
RPAのメリット
RPAツールを使用することで得られる主なメリットは以下のようなものがある。
作業効率の向上:
人間が行うルーチンワークや時間のかかる作業を自動化することで、作業の効率を大幅に向上させる。これにより、スタッフはより複雑で高度な作業に時間を割くことができ、生産性を向上させることができるのが大きな特徴だ。
ミスの減少:
人間が手動で作業を行うとミスが発生する可能性があるのだが、RPAは設定に従って一貫した作業を行うため、作業の誤りを大幅に減らすことが可能だ。
RPAの使い方の例
RPAは、以下のような単調で時間がかかる貿易業務の自動化をしてくれる。
invoiceの処理:
これらの文書は手動で処理すると時間がかかる上、エラーが発生することも多い。invoiceをロボットが自動で処理してくれたら、あとはシステムにデータを保存出来るようになる。
B/Lの作成:
B/Lの作成は、多くの詳細情報を正確に入力する必要がある。ここは弊社でもこれから検証をしていく予定なのでまた随時TwitterやYouTubeで進捗を更新していく。
AI-OCR
AI-OCR(人工知能を活用した光学式文字認識)は、手書きや印刷されたテキストをデジタルデータに変換する技術のことをいう。名刺を読み取るサービスもこの技術が使われている。
AI-OCRを利用する際の主なメリットはこのようなものがある。
効率的なデータ入力と抽出:
AI-OCRは、PDFや書類からの情報抽出を素早く大量に自動化することが出来る。そのため手動でのデータ入力にかかる時間とコストを大幅に削減することが可能となる。
ミスの削減:
これもRPAと同じく人間が手動でデータを入力すると、誤りが生じる可能性があるのだが、AI-OCRは高い精度で文字を認識するため、データ入力のミスを大幅に減らすことが出来る。
情報の検索とアクセシビリティ:
AI-OCRは画像データをデジタル化してくれるので、データとして使える状態にしてくれる。検索ができたり、RPAと連携させてデータ入力を自動化することもできる。
YouTube
これはYouTuberとしての僕が実践をしてきた経験でもあるのだが、YouTubeを使って物流のノウハウ動画をアップしておくと新人教育に使うことができる。これも効率化なのである種のDXだ。
もし会社で社員の入れ替わりが多い時期があったとして、この時に毎回新しいスタッフに同じことを教育するのは教える社員も疲弊してしまう。
弊社ではこのようなOJTの負担を下げるためにTRADE CAMPという貿易のオンライン講座を開発したので、是非 一度使ってみて欲しい。
【法人用 – TRADE CAMP BIZ】
https://trade-camp-biz.jp/
なぜDX化をすすめられないのか?
さてここからがある意味で本題だ。DX化を進めると作業効率が上がり、顧客との関係構築や、企画、サービス向上など本当に大切な業務に時間を使うことが出来る。
しかし、多くの企業がなかなかDX化に踏み出すことができないのは、導入する前に具体的な効果が実感できないからだと思う。
ITに疎い人ほど想像することが出来ない。
例えば、CRMを使って顧客の購買履歴をデータ分析をしたら、見えてくることが必ずある。そこから改善や新しい企画を立ち上げることだって可能なのだが、マーケティング感覚が低い人はこれがよく分からないし、導入前なら尚更である。
現状維持は衰退である
辛辣な言葉を使うと、トップや担当者がDXに対して無知なのである。新しいサービスや技術に対しての感度が低く、常に同じ仕事をしている。
同じ仕事をしていると仕事をしている気になれるのだが、中長期的な視線では衰退をたどっていく事になる。周りがDX化を進めていき効率的な仕事をしている一方で、あなたの会社ではいまだにFAXを使っている。
極端な例を挙げると、そろばんで計算をして、手紙で相手にメッセージを送り、車や電車を使わず徒歩だけで顧客訪問をするようなものだ。
今時そんな会社があるとヤバいと思うかもしれないが、DX化が進められないということはそういうことである。
営業マンと比較してみよう
DX化に対して、もう一つ大きな抵抗としてあげられるのがコストだ。
導入コストが数十万円〜数百万円するとなると、それだけで拒否反応を示す人は少なくない。効果が想像できないのであれば尚更である。
しかし、僕も経営者の立場からお伝えさせてもらうんだけど、仕事のできない営業マンを抱えている方がよっぽどコストがかかるものだ。
年齢にもよるが毎年400-600万円くらいのコストをかけているにも関わらず、新規を取ってこないどころか既存客もライバルに取られる始末。更に悪いケースだと愚痴っぽくて他の社員にも悪影響を及ぼす人間だ。
そこまで酷くなくても、仕事が出来ない営業マンと比較したらDX化の導入・運営コストはそこまで高いものだろうか?
待ったなしのサバイバル
僕は貿易や国際輸送の業界に身を置いて長くなるんだけれども、コロナがあけた今は各社で大きな差が生まれてくると思っている。
コロナバブルで収益を大きくあげた船会社や大手企業は積極的にDXに投資をしてくるだろう。ってか既に投資は始まっている。
中小企業も一部ではこういう投資を進めている。DX化は特別なイノベーションではなく、必要な装備を身につけるという感覚だ。
例えばドラクエだと、装備が弱い状態で新しいダンジョンに行ってもすぐに全滅してしまうように、この業界では新しいステージに業界全体が向かっているし、装備が弱い企業は淘汰されていくだろう。
まとめ
この文章を書いている時点では、日本ではYouTubeを運営したり人材紹介業で既にCRMを導入している状態だが、タイの会社では現在CRM、AI-OCR、RPAを提案している。
僕の相方は超保守的だが、グループ会社の他の社長たちが賛同をしているのが救いだ。
タイではフォワーダーの経営者として、この業界の変革期に変わらないことに対して大きな危機感を覚えているので、積極的に活動をしていく予定だ。また情報をアップデートしていくので、チェックして欲しい。